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HubSpotの日本語コミュニティー立ち上げの背景と方向性|HubSpot Asia 森 夏海さん

2-Oct-05-2022-02-30-30-23-AM

「HubSpotのある生活」をテーマに、HubSpotを使っているユーザー、パートナーを問わず、「人」を軸にリアルな情報をお届けするORANGE100%。

今回はHubSpot Asiaでコミュニティーマネージャーを務める森さんにお話をお伺いしました。
HubSpotの日本語コミュニティー立ち上げのお話を中心に、HubSpot社の働き方や社内制度などを株式会社100代表の田村がお伺いします。

『インバウンド』の思想に共感して入社

田村慶

まず、コミュニティーマネージャーというお仕事をされていると思いますが、森さんがHubSpotに入社された経緯を教えてください。

森 夏海

私はもともと新卒で全日本空輸株式会社に入社し、3年間キャビンアテンダントとして勤務しました。
ITの仕事をしたいというよりは、まず「シンガポールに移住して仕事をしたい」という目的があったので、シンガポールにオフィスのあるHubSpotに応募しました。

シンガポールを選んだのは、前職時代に何度も乗務で訪れたことがあり、住んでみたいと思ったからです。

初めはカスタマーサポートのポジションで入社することになりました。

田村慶

ほかにも海外でのお仕事がある中で、HubSpotに入社した決め手はありますか。

森 夏海

もともとTech業界のことは全く知らなかったのですが、選考を受けるにあたってHubSpotについて調べていくうちに、その理念に共感したからです。
HubSpotが提唱する「インバウンド」とは、「相手から価値を引き出そうとする前にこちらから価値を提供し、惹きつけ(Attract)、信頼関係を築き(Engage)、満足させて(Delight)、ビジネスを成長させる」考え方です。この思想に惹かれて、「こういう会社に入れたら面白そうだな」と、思ったことが決め手です。
ものすごく単純ですね(笑)。

田村慶

未経験からIT周辺の知識を身に付けるのは、大変だったのではないですか。

森 夏海

新入社員教育で基本知識を学んだ後は、お客様のサポートや質問から一つずつ学ばせてもらった、という感じです。

顧客のことを常に考えたサポート

田村慶

HubSpotならではの、顧客サポートのユニークさはありますか。

森 夏海

「Solve For the Customer(顧客にとっての「最適解」を考える)」の精神が根付いていることです。サポートひとりひとりが、常にそのマインドを持って対応していることが、ユニークだと思います。
 
ありがたいことに、HubSpotは「サポートがいいよね」と言ってもらえることが多いです。
伺った問いに対して答えを差し出すだけではなく、「最終的にどうしたいですか」とお客さまの質問の全体像を把握することで、よりその方に合った”最適解”を提供できるよう取り組んでいます。
 
お客様の一歩先を行くというか、「本当は何をしたいのか」、「実現のために、どんな解決策の提示やアドバイスができるだろうか」と、みんな常に考えてサポートしています。
そうした行動が、評価されていると感じます。

田村慶

なるほど。サポートメンバーが社内に複数名いらっしゃると思いますが、見本となる「良い回答」を共有することもあるんでしょうか。

森 夏海

ありますね。「この言い回し、めちゃくちゃ参考になった!」と思った内容はSlackやミーティングでシェアし合ったりします。
人それぞれ、対応の仕方にカラーがあるので勉強になります。

田村(左)と森さん(右)

サポートチャネルきっかけに、コミュニティーが誕生

田村慶

森さんはHubSpotの日本語コミュニティー立ち上げに従事されたようですが、その経緯について教えてもらえますか。

森 夏海

まず、英語コミュニティーの成り立ちについて説明します。
もともと英語コミュニティーは「HubSpotの無料ユーザーさんのサポートチャネル」としてスタートしたという背景があります。
当初は、主に「この製品を使いたいけれど、どうやったらいいですか」みたいな、プロダクトの質問をする場でした。
その後、ユーザー数の増加やユーザー層の変化にともない、ただのサポートチャネルではなく、「ユーザーやエキスパート同士が繋がり、共に学び、アイデアを共有しあうことができるプラットフォーム」へと変わる必要が出てきました。
 
このような背景のもと、2019年に開設されたスペイン語コミュニティーを皮切りに、英語以外の外国語のコミュニティーを展開する運びになり、日本語コミュニティーは2020年に開設しました。
 
”英語以外の外国語”と一言で言っても、それらの国の文化やユーザーの行動様式は違います。米国本社のやり方をそのまま踏襲するのではなく、各国の文化やビジネス慣習に合わせてその国らしいコミュニティーの形成をすることがその国の顧客にとって最も価値があると考え、ネイティブスピーカーが各言語のコミュニティーを専任で担当することになり、そこに私がコミュニティーマネージャーとして入った形です。

田村慶

フリーユーザーのサポート目的で立ち上げたものが、ユーザー同士が繋がる場所としてのコミュニティーに変化していったんですね。その意思決定やプロセスについて、詳しく教えてください。

森 夏海

私たちは、HubSpotとユーザーがつながることに加え、ユーザー同士がつながることも重要視しています。ユーザーが「解決したい」と感じる疑問に対してユーザー同士の会話によってアイデアが得られたり、他社の悩みや課題に関する発信から自社の課題に気づくきっかけになったり。ユーザー同士がつながり、多方向で対話ができることで、ユーザー相互の価値提供とスキルアップにつながっていきます。
また実際にコミュニティーを活用しているユーザーのほうがHubSpotに対する満足度が高いというデータがあったことが意思決定に影響した要因としてあります。

また、先日本社があるボストンで開催された年次イベント「INBOUND」のKeyNoteセッションにおいて、当社のCEOのYaminiと共同創業者のDharmeshが「つながり」の重要性とコミュニティーの意義について語りました。コミュニティーは今後もHubSpotが投資を継続していく注力領域であり、コミュニティーにおけるユーザーの成長が結果的に私たちの事業の成長につながるものであると考えています。 

田村慶

「インバウンド」の思想も、コミュニティーに活かされているのでしょうか。

森 夏海

はい。
HubSpotではまず、コミュニティーを「ユーザーやエキスパート同士が繋がり、共に学び、アイデアを共有しあうことができるプラットフォーム」と定義しました。

この定義を決める際にも「インバウンド」の基本に立ち返りました。企業によってはコミュニティーのゴールとして「サービスや製品を売る」ことや「カスタマーサポートの工数を減らす」などに繋げるケースもあるかもしれませんが、当社では「相手に価値を提供する」というインバウンドの思想のもと、企業目線ではなく「コミュニティーメンバー」が主語の定義を設定しています。

田村慶

なるほど。森さんはHubSpotコミュニティーマネージャーとして、コミュニティーの活用方法に要望などありますか。
例えば、質問への回答はオープンにしてほしいとか。

森 夏海

そうですね。コミュニティーで活躍されている”トップ投稿者”の方たちに、ダイレクトメッセージで質問が届いたりということがあるようなのですが、ぜひどなたでも閲覧可能なコミュニティーフォーラム上でやり取りしていただきたいですね。

同じ疑問を持っている人の参考になりますし、また、それを見た人が「自分はこうやって解決したよ」など、新しいアイディアが生まれることにも繋がります。
 
質問することだけがコミュニティーの利用方法ではないので、ほかにも「自社で、これがすごく役立ちました」「新しい発見がありました」など、豆知識や自分の学びをシェアして、また新たな会話が生まれるといいな、と思います。
 
特にHubSpotを使い始めたばかりの方には、気負わずに気軽に会話をしたり繋がってほしいと考えています。
 
スペイン語やポルトガル語だと、すごくカジュアルで軽いノリでメッセージをいただくんです。
文章も「私、これがわからないから教えてほしいの!」というように、まるでチャットみたいな感じですね。
日本語コミュニティーでは、「初めて投稿します。書き込む場所が違っていたらすみません」など、きちんと丁寧にメールを書いているような感じの投稿が多い印象です。
国民性の違いによって、コミュニティーの雰囲気も全然違うので面白いです。

田村慶

ナレッジの共有に関してですが、日本の場合「競合に知られたくない」「ここからは有料サポートになります」といったように、クローズになりがちな面があるように思います。
そういった流れを変えるような施策は、なにか考えてらっしゃいますか。

森 夏海

そうですね。外部に言えないことを無理にシェアしてくださいとは思っていません。自分が関わりたい、関われると思う範囲で参加いただけるといいです。
ですが、「アクティブなコミュニティーユーザーになってもらえそう」という方に対しては、「ぜひ意見を教えてください」とメンションして、声掛けしていますね。

広範囲の方に声掛けをして、巻き込むように意識しています。他の人が話している様子を見せることで、心理的ハードルを下げるというか、「自分もコメントできそう」と思っていただけるように取り組んでいます。

田村慶

HubSpotの日本語コミュニティーはゼロからの立ち上げでしたが、立ち上げのプロセスや当初の施策について教えていただけますか。

森 夏海

コミュニティーの立ち上げと運営においても、「Attract」「Engage」「Delight」すべてのステージで、価値を継続的に提供することを重要視しました。
 
それぞれのニーズに応じて価値を感じてもらえる情報や、その先でとって欲しいアクションの設定が一層多様になります。
 
そこで、コミュニティーメンバーを「非メンバー」から、「チャンピオンメンバー」までの5段階に分ける「コミュニティーメンバージャーニーマップ」を活用しました。


それぞれのメンバーの「心地よさ」を起点に細分化されたコンテンツを作ることが、重要だからです。
 
それぞれの段階のメンバーに対して、「Attract」「Engage」「Delgiht」を回し続けることで、「点」ではなく「線」でつながりを作ることができます。
そうした取り組みが、コミュニティーの熱量を生み、企業への愛着へと繋がっていきます。
コミュニティーの運営を考える際にも、前後の体験同士が違和感なく、自然に結びついていることは重要なポイントです。
立ち上げ当初の施策としては、ニュースレターを配信して宣伝したり、HubSpotの創業者であるブライアンとダーメッシュのビデオコメントを投稿したり、といった取り組みをしていました。
 
直近では、HubSpotに限らずビジネスパーソン全体に関連があるような時事ネタに近いトピックスを投稿することを心がけています。
 
(例:【Googleアナリティクス4導入準備、できていますか?】小川卓さんが皆さんの疑問に答えます!
 
こちらの取り組みは、コミュニティーユーザー数の増加に影響しましたね。今コミュニティーメンバーではなくても、その人たちが注目しているテーマを取り上げることで、コミュニティーに参加してもらえた、ということです。
 
この施策は、マーケティングメンバーの「日本のコミュニティーにはこういった課題があるよね」という発言からスタートして、企画が実現しました。

田村慶

今後、HubSpotの日本語コミュニティーとして取り組んでいきたいことはありますか。

森 夏海

オフラインでは知り合えなかったような人とコミュニティー上で知り合って新しい学びを得たり、新しい領域に一歩踏み出すきっかけができたり、そんなコミュニティーにしていきたい ですね。

あとは社内外問わず、田村さんなどいろんな方を巻き込んだイベントなどもやっていきたいです。

バックグラウンドの違う多様な人たちにコミュニティーを活用いただくことで、新しい知識やアイデアが生まれ、その結果コミュニティーチャンピオンのようなアクティブメンバーが生まれるといいなと思います。(コミュニティーチャンピオンとは、HubSpotの特定のツールや業界のベストプラクティスについて、オピニオンリーダーやテーマの専門家であることが証明されているコミュニティーメンバーのこと)
しかし、 必ずしもこのジャーニーを昇っていくことが正解ではないことも「インバウンドなコミュニティー」のポイント です。

田村慶

コミュニティーチャンピオンを育てるという意味だと、HubSpotアカデミーとの共存みたいなものはなにか考えがあるのですか。

森 夏海

そうですね。
例えば、アカデミーの認定コースを取得した方同士がコミュニティーでディスカッションしたり、アカデミー勉強会のスペースをコミュニティーにリンクしたりなど、 アカデミーとコミュニティーを繋ぐことで、新しい価値が生まれること を意識しています。

田村(左)と森さん(右)

HubSpotならではのユニークな社内制度と教育

田村慶

シンガポールでの生活について、お話いただけますか。

森 夏海

シンガポールは気候が暖かいのがいいですね。食べ物も美味しいですし住みやすいです。
シンガポールから日本へのフライトは直行便で約7時間ほどです。東南アジアのハブでもあるので、日本はもちろん、インドネシア・マレーシアへ行く際もスムーズですね。

田村慶

シンガポールと日本を行き来することもあるんですか。

森 夏海

HubSpot社には「90日モビリティポリシー」といって、 自分が働く権利を持っている国であり、かつその国にHubSpotの正式なオフィスがあれば年90日以内はその国から勤務できる という制度があります。
その制度を利用して私も年に数日は日本で働いています。

田村慶

ほかにもHubSpotならではの制度はありますか。

森 夏海

多様性を認め合う「インクルージョン」や「心理的安全性」などに関する社内教育 がありますね。
チームごとに動画を視聴してディスカッションするほか、個人でeラーニングを受講します。月間でテーマが決められていて、定期的に時間を取って勉強をすることになっています。

田村慶

日本でいうと「道徳」の授業みたいですね。
従業員サーベイのようなものも、定期的に実施されているんですか。

森 夏海

はい、四半期に1回実施しています。
匿名での質問に対しても、必ずリーダーからのフィードバックがありますね。

田村慶

HubSpotの中での社内異動について教えてください。森さんはもともとサポートチームからコミュニティーに移られたと思うのですが、希望を出せば叶うものなのですか?

森 夏海

希望を出したら異動できるというより 「ポジションさえあれば選考にトライできる」 といった感じです。
マネージャーとの1on1面談で「こういうキャリアを積んでみたい」と意志表明をすると、サポートをしてくれます。
例えば、「じゃあ、ポジションが空いたときのために、こういう勉強をしておこうか」「チーム内で、チームリーダー的な役割を担ってみようか」など、次のポジションに行くための提案を受けられます。
 
カスタマーサポートから入ってテクニカルコンサルタントにキャリアアップした方なども、実際にいますね。
 
私自身も、柔軟にポジションを変えて働けていることを実感しています。

田村慶

今回はHubSpotの日本語コミュニティーのお話を中心に、制度や働き方などを伺うことができて、とても興味深かったです。ありがとうございました。

森 夏海

こちらこそ、ありがとうございました。

田村(左)と森さん(右)

※記事中の部署名、役職名等は掲載当時のものです。

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