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世界標準の売れる仕組みと仕掛けをもっと当たり前に|株式会社電通 梅木俊成さん

100の田村と電通の梅木さん

「HubSpotのある生活」をテーマに、HubSpotを使っているユーザー、パートナーを問わず、「人」を軸にリアルな情報をお届けするORANGE100%。

今回は、株式会社電通の梅木俊成(うめきとしなり)さんと株式会社100代表の田村の対談記事をお届けします。

電通でBtoB企業の売上拡大のためのビジネス支援に従事する梅木さんに、HubSpotやインバウンドマーケティングとの出会い、そして今後の展望などをお伺いしました。

 

分析と戦略について考えるうちに、BtoBにのめり込んでいった

田村慶

まず梅木さんがどのようなお仕事をされているのか教えていただけますか。

梅木俊成

僕は電通のソリューションクリエーションセンターという局の中のグローバルブランディング部に所属しています。
要はマーケティング系の局なのですが、専門性の高い領域に特化しているのが特徴です。BtoB事業を展開している企業の売上を上げるためのプロセスを、従来の広告会社としての得意なブランディング等の領域に加えデジタルテクノロジーも活用し支援する仕事を担当しています。

敢えて言葉を強調しますが、ブランディングのためにお手伝いしているわけではなく、あくまでも「お客様の売上を上げる」ことを目的として、ブランディングやデジタルの技術を駆使してお手伝いしています。

また、電通グループ9社横断で「電通B2Bイニシアティブ」というプロジェクトをやっています。BtoB企業が売上を上げるためのマーケティング戦略や営業戦略を、グループ横断でお手伝いをさせてもらっています。現在102名ほどになるのですが、そのプロジェクトのリーダーをやっています。

田村慶

一般的に電通さんというと、やはりBtoCのイメージがありますよね。
梅木さんの社内的な立ち位置や、なぜBtoBにフォーカスされているかとか、会社や梅木さん自身のお考えを教えていただけますか。

梅木俊成

そうですね。やはり電通というとBtoCのビジネスが中心で、例えば著名なタレントや俳優をアサインするアテンションマーケティングのイメージが強いですよね。僕自身も2011年頃まではBtoCのお客さんが多かったと記憶しています。

マーケティング戦略を考える際に顧客の購買分析を行うのですが、「分析」と「戦略」というものが分断されていて、「分析をした後に戦略を考える」というプロセスに多大な労力がかかることに、ある時ふと気が付きました。
そこで、このフローをもっとオートマティックにできないかなということを考えているときに、マーケティングオートメーション(MA)というものがあることを知りました。

それから、MAがBtoBの領域でよく使われているということを知り、分析と戦略のシームレスな取り組みを実現するために、BtoB領域をやってみようと思ったのが2011年頃のことです。そしてそこにドライブをかけるような出来事もありました。米国出張の際に日本企業特有の営業スタイルがもはや古いのでは?と感じた出来事です。詳細は割愛しますがご興味あれば電通報を御覧ください。

BtoBマーケティング支援をやってみて、マーケと営業の連携が必要なことやチームでリードの行動データ共有しながら売っていかないといけないということを知り、その“チームで売る”ことにのめり込んでいきました。それがどんどん会社の中で売上や利益につながりました。

田村慶

データを用いて分析して顧客支援をしようと思ったら、知らず知らずにBtoBの領域に関わることが増えていたという感じですね。

梅木俊成

その通りですね。もっと丁寧に言えば、その当時の電通グループにはBtoBマーケティングに関する知見がブランドコミュニケーション以外ほぼ存在しなかったということもあります。今でいうMA/SFA/CDPといったDXツールや組織構築支援の解決フレームが確立していなかったということも背景にあります。だからこそ電通としてこの領域もやってやるぞ!みたいな(笑)。

100の田村と電通の梅木さん

BtoBとBtoCでは「買う」プロセスが違っている

田村慶

BtoBとBtoCにおいて梅木さんの中での大きな違いってどこにあるのでしょうか。データ分析みたいなところはどちらも共通していると思うのですが。

梅木俊成

「買う」という意思決定をするのはどちらも「人」なんですよね。そういう意味で、基本的には同じだと思っています。
ただ、「買う」と決めるプロセスには大きな違いがあります。BtoBは担当者個人の判断だけでは購入を決められません。複数の意思決定者がいて稟議制で購入判断がなされます。だから基本的には情緒的な判断で意思決定することはありません。しかし、例えばSalesforceのような高機能ツールを100%理解して導入している企業がどれくらいあるか?と言うとこれも疑問が残ります。つまりSalesforceというブランドを導入することによる精神的充足感も「買う」の意思決定に寄与していると感じます。つまり基本的には機能的/合理的価値による判断ですが、初めて導入する時や類似製品と並んだ時は、情緒的価値も含めたブランド力が「買う」と決めるプロセスには関係していると言えます。

そしてもう一つ理解しておかないといけないのは、BtoBビジネスの特徴は、最終的に「人」、つまり、直接販売の自社営業マンや間接販売のパートナーである販売代理店が介在することが非常に多いことがBtoCと異なる部分だと思います。最終的に相手に買って頂くのは営業マンの仕事ですが、この従来型の営業プロセスに日本企業も柔軟に適応していく必要があるのではないかと考えてます。

これだけデジタルが当たり前になっている世の中で、営業担当の感覚や嗅覚だけに頼って営業戦略を決めるのは、勿体ないと思います。日本特有の膝を突き合わせて熱量をもって会話することを否定しているわけではないです。
ただ、日本特有のやり方に加えてデータで行動が可視化される技術を取り入れることによって、よりいっそう営業がしやすいような環境に変えることができます。それはやはり営業部門だけでは難しいので、マーケティングや情シスの部門とチームになって取り組むことで、実現性の高いものになります。新規開拓の場合であれば問い合わせをしても意味がない見込客リストに闇雲に電話営業する件数は劇的に減らせるし、ルート営業であれば担当企業の違う部署の需要をデジタルコンテンツや技術によって掌握することも可能になっているので。

BtoBビジネス規模がBtoCの規模と変わらなくなってきた

田村慶

梅木さんがBtoBに関わり始めて10年ほどになると思うのですが、最近はBtoBマーケティング手法が世の中に積極的に発信されることもあって、共通理解みたいなものが随分と広まってきましたよね。当時マーケティングの重要性についてはほとんど言われていませんでした。
この10年の間で大きく変わったところや、意識してやってきたことはありますか。

梅木俊成

振り返ってみると、デジタル技術の発展とともに変わってきた面はあると思います。僕たちが変わってきたというよりも、購買担当者側が変わってきたと感じます。

例えば東京の会社の方がWebサイトでマーケティング情報を発信していて、それをたまたま大阪の会社の担当者が見つけて問い合わせをして、Google Meetでリモート商談をして、直接会うこともなく発注が決まるということが起きはじめていて。
デジタル技術が発展してきたことや情報収集することを任される担当者がデジタル世代であることも背景にあると思います。

BtoBの企業から「Webサイトを使ってうまく情報発信したい、見込客を獲得したい」という要望が年を経る毎にどんどん増えてきましたね。
ネットが普及する以前はBtoBに関する情報提供は展示会等を除きほぼ営業が担ってきましたが、その役割がどんどんデジタル、つまりウェブサイトに置き換わっているということだと感じました。
ただ残念ながら電通にとってBtoBビジネスってメジャーな領域ではなかったんですよね。タレント使ったり、大掛かりな仕掛けを施したイベントやったり、、とは程遠く(笑)。必要性があるけど、そのビジネス規模はBtoCビジネスと比較すると規模が小さかったので。
その中で注意してきたことはものすごく簡単で、「BtoCビジネスと変わらない規模の売上と利益を作る」ということです。電通内で「BtoBビジネスは今後可能性があり、売れる領域なんだ!」という実績を積み続けるみたいな。

しかし初年度は大赤字でした。なんせ手探りでゼロから始めたので。
MAの導入や設定をさせてもらうとか、コンテンツマーケティングの記事はライターさんとの打ち合わせから同席させてもらうとか、海外の現地まで行ってソーシャルメディアで情報発信してみるとか、初めはそんなことをやっていました。なぜこんなことが出来たのか?というと、その当時の役員陣たちの理解としかいいようがありません。
もともとBtoCのダイレクトマーケティングという領域でそれなりのポジションを作り利益も生み出していた実績も背景にあったと思いますが。電通っていい会社でしょ?(笑)。

ちなみに僕もこの取り組みのために社内で8回プレゼンした記憶は忘れませんが。初年度は赤字ですが2年目から黒字にします!と。
だから初年度は血眼でガムシャラに頑張りました。僕としては学びが多かったですね。従来の広告代理店なら外部の協力会社さんにお任せ状態という時代がありましたが、僕は自分が納得するまでやりました。それに代理店から発注される側、つまり協力会社さんの気持ちや業務の大変さを同じ立場で理解することで気持ちよく一緒に仕事をしてもらいたかったとうこともあります。わかってない人に色々言われるのって嫌でしょ?(笑)。こういうプロセスを体験し、納得するまでやったからこそ、どのような仕組みでやれば安定的に利益が生み出せるのか?を明確にコントロールすることができるようになったと思います。
ある意味、赤字の1年間は投資をしてもらっていたんだ、と自分で都合よく解釈しています。

要は、営業でもプランナーでも数字という成果や再現性のあるロールモデルを作るということはやりたいことをやらせてもらえるポイントなんじゃないかなと思います。

田村慶

時代背景と実績がしっかり積み重なって、それが今、コロナもあって加速して合致して、クライアントも大幅に増えたっていうことですね。

梅木俊成

まあ調子のいいコトを言ってきましたが根本的には、自分のやりたいことを信じてやり続けただけです。本当に面白くて突き詰めていった。ただ、僕は経営者じゃなく雇ってもらっている立場だから、給料の3倍くらいの利益を会社に残すのは最低限の義務という考え方でやり続けました。そうしたらいつの間にか「BtoBといえば梅木に聞け!」という今の形になっていたという感じです。

田村慶

ご自身の探求心を突き詰めていく過程で、BtoBがひとつの切り口になって、結果的に今のお仕事にもつながっているということですね。

梅木俊成

そうですね。肌感として右肩上がりでしたが、2017年頃に電通グループである電通コンサルときちんとBtoBのマーケティングDXの市場規模を調査したところ、実は莫大に大きな市場であると分かりました。僕自身の探求心からBtoBにたどり着いたというのが95%なのですが、ちゃんと調査してみたら、実はポテンシャルがものすごくあるということが分かりました。

そこで、個人の属人的なものではなく、戦略的に会社組織として取り組もうと思って2020年10月に電通B2Bイニシアティブというプロジェクトを作ったという流れですね。

チーム一丸となってクライアントを支援する

田村慶

B2BイニシアティブではBtoBのDX全般をサポートしているのでしょうか。それともある一部分だけですか?

梅木俊成

結論としては、BtoBビジネスを全般的に支援しています。
ただ「何でもできる」という言い方は分かりにくいので、マーケティング的に整理すると、STP戦略があって4C4P戦略に落とし込まれると思うのですが、このSTP戦略設計をクライアントと一緒に創り、「4P」の中でも特に「Price」を除く「Product」「Place」「Prmotion」にあたる領域の支援をやっています。電通B2Bイニシアティブは9社横断組織となっており、その中には電通コンサルやISIDビジネスコンサルのような経営戦略レベルから支援している機能や、電通国際情報サービス(ISID)のようにサプライチェーン領域や人事会計システム構築までやっている機能もあります。

例えば、BtoB企業からマーケティング活動を改善したいという相談を受けたとき、そもそもその市場に参入することが正しいのか、ターゲットやポジショニングが本当に合っているのかを、お客さん側が実は分かっていないことがよくあります。
「弊社がターゲットとすべきアカウントはどこが適切なのか教えてほしい」みたいな。日本国内の事業者数は400万弱と数えることが出来て、具体的に電話番号付きで社名リストを出すことができる、とか割と知らないんですよね。
コンサルティング領域をお手伝いするために、電通コンサルティングやISIDビジネスコンサルティング、電通内の僕が所属している部署であるとか、電通デジタルのビジネストランスフォーメーション部署がチームとして上流設計をしています。戦略設計がしっかりできてから、メディアやWebサイト制作、MA/SFA/CDP等の導入を行います。場合によってはマーケティング施策ではなく、メーカーと販売パートナーさんとの関係管理(Partner Relationship Manegement)システムの構築をする場合もあります。これがグローバルであれば電通や電通デジタルのグローバル部門や海外のグループ各社や電通B2Bイニシアティブと独自に提携している現地エージェンシーと連携する感じです。役割分担をしながらお客さんをサポートしているという感じですね。それと、案件数が多いのでグループシナジーを活かし類似機能を多く持っているということでもあります。

田村慶

電通グループといういろいろなサービスを提供されている会社さんが集まって、一つのBtoBという切り口にすることで、どこが出口、どこが入口になろうともお客様のビジネスの流れを構築して分析して改善していくといったところが提供できるという考え方ですね。

梅木俊成

「何でもできます」と言いながら、やっぱり得意不得意はありますよね。そのために、それぞれ特化したグループ会社が我々の仲間にいますので、得意なところ、得意なチームと組んで強化と補強をしながらチームを作っていくというところですかね。

インバウンドマーケティングの考え方を知ったのはセミナーの依頼からだった

田村慶

ありがとうございます。では次のテーマに移りたいのですが、梅木さんとHubSpotの出会いをお伺いできますか。

梅木俊成

きっかけは、某県からの「中小企業向けのマーケティングセミナーをやってほしい」という依頼です。ただ、電通ってどうしても大企業のお客さんが多くて、中小企業のお客さんって正直あまりいない。いないことはないのですが少ない。

でも、中小企業の社長さんたちに「電通の話を聞いて良かった」と少しでも思ってもらいたいなと思ったので、中小企業向けの自社のソリューションを整理・掘り起こししてみました。その時にまず見つけたのが「インバウンドマーケティング」という概念でした。

インバウンドマーケティングを研究して実際に自分のクライアント案件で導入したときに、これはちょっといけそうだ、使えるぞということで、そのセミナーをすることになりました。

とはいえ自分が体系的にインバウンドマーケティングをやれていたのかというとやれていなかった。完全に我流且つHubSpot社の英語サイトの海外事例か書籍しか情報がなかったので(笑)。もっと詳しく学びたいということで、関連するキーワードで検索をしたときに複数社のHubSpotパートナー企業さん達がヒットして、田村さんの会社含め4社が見つかり、全社のメールマガジンに登録しました。

自分にとって欲しい情報が、売り込みされることもなく心地良く届いたのが田村さんの会社で、アポを取ってお話する機会をいただきました。まさに「インバウンド」された感じです。そこで自分がこれまで調べたことや試したことなどお話をして、1時間半のアポの予定が、3時間くらい話をしていましたよね。
そこで初めてHubSpotという会社がやっていることやインバウンドの概念などを正しく教えてもらったのが、HubSpotとの出会いです。

だから僕にとっては”HubSpot”というよりも、”田村さん”という存在が運命的な出会いだったのかなと思っています(笑)。

田村慶

ありがとうございます。
当時お話をさせていただいた際も、インバウンドマーケティングにぐっと惹かれるものを感じていらっしゃったと思います。インバウンドマーケティングのどういうポイントに惹かれていたのでしょうか。

梅木俊成

当時、田村さんとお話をした時の正直な気持ちは「本当に?」という「疑問」でしたね。当時の僕は、テレビCMやデジタル広告を大量に打って自分から積極的に切り込むものだと思っていたのです。とにかくリーチして、なんとかして振り向かせて、と。
そういうことをやっていたのですが、インバウンドという考え方を本で知って、たしかに凄いなとは思いました。
でも、これって面白そうだけど、どこまでいけるのかみたいな疑問は正直あった。

自分がインバウンドマーケティングにのめり込むきっかけになったのは、お客さんの案件で、田村さんとチームを一緒に作り、Webのコンテンツを通してリードがバンバン入ってくるっていう「事実」を目の当たりにしてからですね。しかもリードを獲得するだけじゃなくて、当時担当していたお客さんの営業部門に商談が入り、実際に大規模な受注をするという出来事は衝撃的でした。こんな経緯で受注が産まれるんだ!と。徐々に核心に迫っていったというのが正しいですね。その他、作ったコンテンツが書籍化されたりメディアから取材を受けたり。中学校の授業の教材として利用させてほしいという問い合わせもありましたね。そしてお客さんがどんどん変化していく様子も忘れられません。

お客さんも最初はインバウンドマーケティングを懐疑的に思うのですが、結果的に数字が追いついてくるから、お客さんの方もどんどんのめり込んでいくというようなパターンが多いです。

100の田村と電通の梅木さん

事前に「中長期的な施策である」という認識合わせが重要

田村慶

僕も同じ感覚で、取り組み始めたばかりの頃は「これは大丈夫なの?」みたいにお客さんが不安になる期間があります。僕の中ではだいたい半年ほどですが、それからぐっと数字が現われてくる。そうすると「やって良かったね」となりますよね。
梅木さんは成果が出るまでの期間に、お客さんをどう説得されていましたか?

梅木俊成

「短期的に成果が出るものではありません。それでもやりますか」ということは、お客さんにしっかり確認しました。最短で7〜8ヶ月、商材によっては2〜3年というスパンを覚悟してやらないといけないですと。それと、主に制作していく記事コンテンツ(ブログ記事)は、顧客目線で作ることが必要なので基本的には口を出さないでください、ということも言います。実際にはそういうわけにはいかないことのほうが多いですが。

ただ、なぜリードが取れたか、取れなかったのかは全てMAツールのダッシュボードに数値化されていくので、問題が可視化されて改善できる。1発逆転ホームランのように「これをやれば急激に大きな成果が出る」というわけではなく、徐々に上がっていくものですと。それを始めにしっかり説明することは大事ですね。

田村慶

少しずつ成長させていくためのマーケティング手法だよという認識をしっかり合わせるということですね。

梅木俊成

はい。過剰な期待にならないように言います。インバウンドマーケティングは中長期施策であってどうしても短期に成果を出したい場合はやはりメディアやウェビナー、またはセールス代行施策等を提案しますね。

田村慶

インバウンドマーケティングを知って、いろいろな選択肢をもった上でアウトバウンドとのバランスを取って最適なプランを提案できるようになったことは、大きな変化ですかね?

梅木俊成

それは大きいですね。元々はインバウンドマーケティングの発想すらなかったので。特に2010〜2015年頃、自分からリーチするダイレクトマーケティングが主流でした。相手が変わるのを待つとか共感させて一緒に成長するというよりは、「パワーで振り向かせてなんぼ」くらいのアウトバウンドな考え方でした。

ただ、情報の取得方法が変わってきたので、相手がどうやって情報を取得するのかを敏感に察知しないといけない。まずは僕らが知って変わる必要があります。そういう意味でも、インバウンドという考え方に早い段階で出会って、アウトバウンドしかなかった脳みそに60%くらいはインバウンドの考え方ができたのは良かったです。

インバウンドマーケティングを知って、「やらない」選択肢が生まれた

田村慶

考え方が変わったことで、クライアントへの提案や社内の立ち位置など、そのあたりの変化はありましたか。

梅木俊成

「やらない」という選択肢ができたことですかね。
明らかに商材とターゲットがマッチしてない商品があり、それを「云億円積むから売れるようにプロモーションしてくれ」と頼まれることがあります。ただ、間違った戦略をもとにプロモーションしても期待する成果が明らかに困難だと予想される場合があります。多いのは、「ターゲットは製造業です。」という言葉です。
日本国内の製造業は世界と比較しても多岐に分かれます。ざっくりと600種類です。国際標準で言えば140種類ほどなのでどれくらい日本の製造業が細かいかはお分かり頂けるかと思います。
そしてその業態によっても需要が共通するもの(例えば人事や会計ソフト等)のように製品自体のカスタマイズも容易なものもあれば個々によって全く異なるもの(半導体、センサー、電子回路基盤等)のようにカスタマイズするには人件費以外の工場設備の変更や材料等の原価コストが大きく変化するようなものもあります。つまり、商材とターゲット設定が乖離し過ぎていると、獲得しても無駄なリードが集まってしまうことが見えているケースです。

こういう場合、無理にプロモーションするのではなくて、「少し一拍おいてSTP戦略をもう一度見直してみませんか?特に他ターゲティング戦略として、具体的な社名ベースでターゲットリスト抽出までやってみませんか?インダストリーベースまでしっかりと絞り込んでみませんか?」という方向に持っていきます。

田村慶

クライアントにとって、より便益を得られる状態にしましょうということですね。

梅木俊成

お客さんに強く頼まれたら、全てを鵜呑みにせずとも言われるがままに近い状態で受けてしまうこともあるかもしれません。受けるにしても期待する成果とは程遠い可能性になることもしつこく伝えます。ただ、無理なことは無理だと伝えることも大事だと思うようになりました。

インバウンドの考え方に出会ったことで、お客さんや、その先にいるお客さんにとってベストは何なのかということについて、本気で向き合うようになったと思います。

電通の梅木さん

コロナ禍をきっかけに増えたインターナルブランディング

田村慶

コロナ禍でお客さんに直接会えなくなったというお話をよくいただきます。
BtoBにフォーカスしてご支援される中で、いま課題になっていることや、どういうご相談が多いのかなど、HOTなトピックスがあればお伺いできますか。

梅木俊成

そうですね、3つあります。
一つ目は、パーパス策定とかパーパスブランディングという文脈のインターナルブランディングです。コロナ禍で社員同士の結束とか、グループ会社同士の結束が弱まったみたいな話が結構聞こえてきていて。BtoB企業では事業転換期やM&Aによる買収、つまり異なる文化を吸収する際などにBtoBブランディングを行うことが多いですが、コロナによる環境変化は事業転換を促すほどに大きなインパクトがあることが背景にあるといえるでしょう。

社内のインナーコミュニケーションとかインナーブランディングにお金を使うのってもったいないと思うかもしれないですが、対外的な情報発信をする前に、社内で「我々は何に向かっているのかを一度整理しましょう」という自社の存在意義に関するご相談がすごく増えてきています。社内イベントを企画したり、パーパス設計のワークセッションを始めたりすることが最近は多いです。
あまり気づいてない方が多いのですが、社員も対外的にブランドイメージを形成するコンタクトポイントの一部ですからね。存在意義、どのようなビジョンでどこを目指しているか?ということを共通認識にして一枚岩になるということですね。

田村慶

自分たちが何者なのかを再認識して企業活動をする、といったところの取り組みを始めている企業さんが多いということですね。

梅木俊成

そうです。二つ目としては、デマンドジェネレーションの改善の相談もよく受けますね。「MAをうまく使いたい」みたいな相談がよくあるのですが、そもそもMAってアメリカで流行ったもので、アメリカではお金を出して個人情報を買うことができるのです。データが大量に入ってくることが前提で、それをフィルターにかけるのがMAという考え方で成立しています。そして、見込客の解像度を上げるということですね。オートメーション機能にフォーカスされがちですが、MAは見込客のニーズや属性情報等を事前に明らかにして自社に合致している企業または担当者なのか?を掌握することに真の価値があります。
日本の場合は個人情報の扱いが難しいので、MAのシナリオはアメリカのようには成立しないのです。

そこも含めて、デマンドジェネレーションのどこがネックになっているのかを見つけて改善の提案をする、という支援もやっていますね。

田村慶

既に何らかの取り組みをされていて、その上で上手くいかない部分の改善を電通さんにご相談するのですね。

梅木俊成

はい。コンサルやベンダーに依頼したけど、結局「絵に書いた餅状態」で全く活用できてないのでなんとかしてくれ、とか。あと全くそんなことに興味がなかった超トラディショナル企業さんから初めの第一歩のご相談を頂くことも多いです。

最後三つ目に、プライベートのハイブリッド型イベントが増えています。リアルの方が商談しやすいので営業部門としてはリアルでやろうとするのですが、またコロナの緊急事態宣言などが出た場合にどうするかという話で、リアルとオンラインのハイブリッド型はどうかという意見が出てきます。メタバースといった仮想空間活用のご相談も少し出てきていますが、僕個人としてはまだ研究段階です。話題性にはよいかもしれませんが。

社内ではオンラインだけでいいという考え方もあるし、営業部門からはリアルで商談したいという話もあって、「社内でどちらか決めたいから、実行データとか予測データを使って説明をするところから手伝ってほしい」と言われることも最近はあります。

田村慶

冒頭に梅木さんはマーケティングのお仕事をされているというお話がありましたが、実はマーケティングだけでなく営業面も考えているという部分がベースにあるのかなと感じました。

梅木俊成

うーん。そうですね。僕がやっていることを一言で言えば、「CX=コーポレートトランスフォーメーション」なんですね。CXって一般的にはカスタマーエクスペリエンスだと思いますが、CXのCって、僕はコーポレートだと思っています。

クライアントは過去の成功体験でそのまま戦おうとしても、「あれ、勝てない」みたいなことが起きるようになります。その「勝てない」ことを実感するのは現場の営業担当なのです。でも、現場の営業担当が今までのやり方を変えることは勇気のいる話で、営業部門だけで済む話ではなく、会社全体の話になってくるのです。

今までの成功体験を捨てろ!とは一切言うつもりはないです。ただ、時代の流れで戦い方も変わってきているのも事実なので、僕たちと一緒にチャレンジしてみませんか?、ということをやっているつもりです。
営業のあり方を変えることは結局、会社のあり方を変えることにつながりますから。

BtoB事業をもっと世界標準にしていきたい

田村慶

ありがとうございます。最後に、梅木さんの今後の目標やビジョンはありますか。

梅木俊成

電通B2Bイニシアティブでは「世界標準の売れる仕組みと仕掛けをもっと当たり前に」というビジョンを掲げて活動しています。日本のBtoB事業におけるマーケティング及びセールス活動がもっと世界標準なものになっていくようにお手伝いをしていきたいと思っています。

世界標準とは、グローバルで成功している企業のビジネスモデルを指します。HubSpotが提唱するフライホイールやSalesforceのTHE MODEL、書籍「FREE」で有名になったフリーミアムモデル、他にもB2B領域でも応用できそうなプロシューマ、ファンクショナルオーナーシップ、サブスクリプション等様々なビジネスで活用・応用されているビジネスモデルがあります。こういう先人の知恵を活かしスピーディにCXを推進していきたいです。また、売るための仕組みはメディアや、システム、またはマーケティング戦略のフレームという箱だったりしますが、ここに大きな差別化要因はありません。その意味で仕組みに留まらず電通の得意分野であるアイデアという仕掛けをセットにして、企業のマーケティング・セールス・開発活動を支援していきたいと思います。

HubSpotの提唱する「インバウンド」という思想はパーパスブランディングやソーシャルグッドという概念ととても似ていると思いますので電通B2Bイニシアティブとしてもこの分野を強化していきます。

日本国内でHubSpot導入社数No1の100社さんとも深く連携していければと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

田村慶

ありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願いいたします!

100の田村と電通の梅木さん

※記事中の部署名、役職名等は掲載当時のものです。

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